「北越」 2015年2月 北陸本線編

2015.2/21

 前回の485系塚山付近での撮影から5日後、再び北を目指して出撃することにした。あれからT18とK1はかつて無いほどに順調に運用を回り続け、偶然にもこの休みの日、前回と同じくA601とA603運用にそれぞれ就くことが分かった。直江津と金沢でマルヨする運用。夜間のうちに新潟車両センターで差し替えられることの無い安全安心のA601、A603に国鉄色が充当されるこの日は、念願の本当の「晴れ」の予報になった。前回塚山俯瞰である程度目的は達成できたので、いつかやってみたいと思っていた市振俯瞰に挑戦することにした。舞台は新潟県最西端。ちょっと足を伸ばせば午後の「北越6号」を水橋立山バックで仕留めることが出来るはずである。今回は迷わず関越道ではなく中央道で向かうことにした。首都圏から高速道路で現地入りするには上信越道〜上越JCT〜北陸道が一般的であると思うが、糸魚川方面に向かうにはかなり大きく迂回させらるため、かつて大糸線を撮影する際によく使った中央道安曇野ICで一般道に降りて大糸線沿いに北上するルートを選んだ。もともと一発目の撮影である「北越3号」は正午頃の通過となるので時間もかなり余裕があったので、大糸線北小谷駅に近い道の駅「小谷」に深夜2時前に到着し、爆睡を決め込むことにした。

 翌朝、暑さで目が覚めた。太陽光が眩しいほどに燦燦と降り注ぎ、車内は蒸し風呂状態。そして今日の勝利を確信した。何度も通った懐かしい大糸線沿いの国道148号を進み糸魚川で国道8号線へ。いよいよ目的地に近い道の駅「越後市振の関」に到着した。食堂でヘロヘロに伸びきってコシが無く、噛まずに飲み込めそうな月見そばで朝飯。クルマを置いて俯瞰ポイントへと急いだ。小さな児童公園の裏から、法面のメンテナンス用の狭い階段をひたすら登り続ける。途中何度か休んで息を整えながらお立ち台に近づくと、1時間前というのにすでに20人ほどのクライマーたちが撮影の準備をしておられた。キャパは非常に広い撮影地なのだがベストなアングルはかなり限られ、すでに一番端しか空きがなく、早速お邪魔させてもらう。快晴の空からありがたいほどの順光。そして真っ青な日本海。最高のコンディションとなった。本来の目的はT18でやって来る「北越3号」だが、この区間は新幹線開業で3セクに移管されるため、最後の走りを披露する様々な列車たちを写真に収めていった。






2015.2/21   北陸本線   越中宮崎〜市振   EOS5D  24-105mm

 今日は土曜日。残された時間まであと僅かな晴れの間を利用して、この広いお立ち台にはこうしている間にも続々と下界から三脚を担いだ男たちが登ってきた。ガチテツから厨房ヲタまでそれはもうガンガン登ってくる。人種・機材は違えど485を愛する気持ちは皆同じ。列車を待っている間にもそこかしこに世間話の花が咲き、2月とは言えポカポカな陽気の中、総勢50人ほどが幸せなひと時を楽しんでいた。



 本番前、最後に通過する「青坊主」の普電で一同「オエ〜ッ」っとなったところで、今日このステージの主役、T18編成による「北越3号」の登場の時間になってきた。気がつくとアレだけくっきりと見えていた水平線が怪しい感じになってきて、画角を調整しようと絶対レベルである水平線が利用できなくなってしまって水準器を取り出した。さぁ、来やがれ!




T18編成 北越3号
2015.2/21   北陸本線   越中宮崎〜市振   EOS5D  24-105mm

 ちょっと前後が開いてしまって間の抜けた感じは否めなかったが、念願の市振俯瞰でイメージしていた画像を手にすることが出来て満足だった。3号が行ってしまうとこの広いお立ち台にいたほとんどの人々はヤマを降りてしまい。自分と数名だけが取り残された。余韻に浸りクルマに戻る。さぁ次は水橋だ。国道8号を西に走り出し、朝日ICで北陸道に乗る。今日は土曜日なので水橋で迎撃予定の6号はそれはそれは大変な人手になると予想し、早めに現地入りして場所取りをしたいと願うが、空腹には適わない。途中の有磯海SAで高い割には貧素な海鮮丼を食す。すると自分のテーブルの周辺の客人たちは、自分と同じ目をしていることに気づき会話を盗み聞きしていると「K1が・・」とか「トワが・・・」とか「立山バックで・・・」などとグループで話している。考えていることは皆一緒。と同時に水橋の混雑っぷりがさらに懸念されてきた。急がねば! そのまま北陸道を進み滑川ICで降り現場に到着すると、6号通過の2時間半まであるにもかかわらず、すでに市振俯瞰にいたそれ以上の人出に膨れ上がっていた。その前に気になるのはクルマの駐車スペースであったが、線路沿いの広大な空き地はすでに多くの県外ナンバーで埋め尽くされていたが、奇跡的にも一番奥の一角だけが空いていた。転回している間に後から来たクルマに占領されないように速やかに駐車完了させ、機材を持ってお立ち台に到着。まだ6号通過まで2時間以上あるが、すでに50人以上の撮影者が線路という舞台にレンズを向けていた。こんな広いお立ち台でもベストなポジションはもう限られているが、なんとか1人分のスペースを見つけることに成功した。気になる太陽光線は抜群の光を照らしてくれており、あと2時間、何とか持ちこたえて欲しいと切に願った。なぜなら予報では17時頃から曇りの予想が出ていたからだ。




圧巻! 最初にやって来たのは貨物だった。
2015.2/21   北陸本線   水橋〜東富山   EOS5D  100-400mm

 しかし最初に撮った貨物列車を最後に徐々に辺りは曇り領域に侵食され始め、東に移動する雲についに山の稜線にも陽が陰るようになってしまった。奇跡を信じて待つのみ。その後、しばらく経ってもか弱い光線が降り注ぐのは変わらないばかりか、回りの状況も変化してきた。続々と撮影者のクルマが増えてきて、路駐も発生しだし、ついに民家の玄関先に駐める輩まであらわれ始める。イヤな予感。休耕中の田んぼまでズカズカ入り込むヤツまで登場する始末だ。道連れは勘弁だ・・・。案の定しばらくすると富山県警のPCが登場。一部の不心得者を排除しにかかるかと思いきや、お巡りさんも近くにいた撮影者と談笑をし始めた。










続々ともうすぐ撤退する北陸本線のスター達がやって来る。何年後かには夢の光景になるだろう。
2015.2/21   北陸本線   水橋〜東富山   EOS5D  100-400mm

 6号を待っている2時間、全く退屈することなく時を過ごせることができたが、曇りが時々薄晴れになったりして期待と落胆の繰り返しで、天に生殺しにされているようだった。やがて通過時刻15分前。到着した時よりも何倍にも膨れ上がった撮影集団。一体何人いるんだろうと視界に入る人たちをヒマ潰しにカウントしてみると、その数、250名。あの神社の建物の影にいる人を加えたら300名以上だろう。めったに週末に撮影に出かけない身にとってそれは驚異だった。経験上では御殿場線でイゴマルを撮った時以来だと思う。さてそんなことはさておき、いよいよ決戦の時。上空を見上げると僅かながら小さな雲の切れ目が移動してくるのが分かった。スポットライトは3分後か、それとも1分後か!? 300人の夢と希望が天に届いて欲しい。そう願うと徐々に周囲が明るくなりだした。自分も含めたマニュアルで撮影している何名かが露出制御の作業を開始したその時、ヘッドライトが遠くから姿を見せた。


1056M 「北越6号」
2015.2/21   北陸本線   水橋〜東富山   EOS5D  100-400mm

 なんとか、もうなんとか薄日が編成前部を捉えたものの、数分前に通過した曇り領域が山の稜線をエッジの利かないあいまいなものにしてしまった。しかし通過1分後には、また濃い雲が現場を支配したのだから、我々はひとまず勝ち組であったのだろう。
 北陸特急系統の廃止まであと1ヶ月を切った。これから3月末まで、自分的には仕事が少し忙しくなる予定で、こうして485の活躍を見るのも今日が最後かもしれない。今までライフワークのように「北越」「くびき野」を追った日々を思い出しながら、安房トンネルで松本へ抜けて明日の仕事に備え、急ぎ早で自宅に戻った。